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よむとす No.155 伝える、伝わる

[2017年7月1日]

ID:414

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伝える、伝わる

中央図書館 中平 憲一

時や空間を超えて、大切なこと、伝えようとしなければ伝わらないことがあるはずなのですが、うまく伝わらないことってありませんか。今回は、そんな「伝えたいこと」を感じた2冊をご紹介します。

『くらべる時代 昭和と平成』

『くらべる時代 昭和と平成』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

おかべたかし/文 山出高士/写真 東京書籍 2017年3月

同じものでも、昭和時代のものと、平成のそれを見比べてみると、意外な違いに驚き、「ああ、そういえばそうだった」などと懐かしいものがあります。

この本は、「日傘」や「横断歩道」など34組の身近なものを取り上げ、それぞれの「昭和」と「平成」の違いを左右見開きの写真で紹介しているので、一目瞭然、見比べることができ、さらにその変化の背景や理由を調査した、わかりやすい解説付きです。

例えば、「昭和の500円玉」と「平成の500円玉」では、思った以上にデザインが違うことに驚かされます。昭和57年に登場した500円玉は、偽造防止を目的に平成12年にデザインと材質が変更され現在のものになっています。デザインだけでなく光沢まで変わっていたことに驚かされます。お手元に500円玉があれば見比べてみてください。

ボリューム重視の「昭和の花束」は、今や多くの種類の花を高密度に組んでドーム型に束ねたコンパクトなものが主流になりつつあります。「昭和の花束は3か月ほどで作れるようになるのに対して、平成の花束は5、6年技術を学んだ人でないと作れない」というから驚きです。

気づかぬうちに変わっていたこと、変わったことを忘れてしまっていたことに気づくことができる1冊です。「古い」、「新しい」ではなく、その時代にそれぞれの理由があったのだと知り、サービスやものづくりへの情熱が伝わってきます。

最近では和式便所や公衆電話の使い方を知らない子どもが増えているとも聞きますが、災害時など、いざという時に必要になるかもしれないものもあろうかと思います。「自慢」でも「懐古」でもなく、ふんわりと次の時代にも伝えたい何かが感じられる1冊です。今、目にしているもの、変わりゆくものを別の視点で眺めることができたらと思います。

『不可能を可能に 点字の世界を駆け抜ける』

図書館には、字が読みにくい方々のために字が大きく印刷された「大活字本」や、書籍の内容を音声で録音した「声の本」があります。

「大活字本」は、細かい字が読みにくくなった方々も抵抗なく読めて、最近では特に借りる方が増えています。「声の本」は、本や雑誌に加え、市の広報や議会だよりなど幅広いニーズに対応していますが、その製作は多くのボランティアやライオンズクラブからの永らくの寄附に支えられており、その方々の熱意には頭が下がる思いです。

本書は十代で視力を失った著者が、日本点字図書館での勤務を通じて視覚障がい者の読書や生活のために取り組んだ内容のエッセイです。

著者は、デジタル化に対応するための点字や録音図書のネットワークづくり、道路の点字ブロックの有効な活用方法、駅のホームの転落防止柵設置などを牽引してきた方で、視覚障がい者の生活向上のために奮闘する様子が描かれています。今の「声の本」のネットワークが多くの協力者を得て形成されていく過程を知ることができます。

そして、現在、全国的に使われている録音図書のネットワークづくりには、県内企業のシナノケンシが採算度外視で開発に取り組んだことが欠かせなかったと記述されています。

何かを伝えようと出版・刊行されている書物が、身体的な理由を問わず、いつまでも同じように親しまれる環境であってほしいと思います。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。