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よむとす No.107 北陸が熱い! 北陸新幹線と金沢に関する本 2015年06月15日

[2017年6月8日]

ID:182

北陸が熱い! 北陸新幹線と金沢に関する本

中央図書館 今村 洋子

現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「まれ」は、石川県の能登半島が舞台となっていますが、今年の3月に北陸新幹線金沢・富山~長野間が開業したこともあり、この春は北陸の話題でもちきりでした。
そこで今回は、飯田市立図書館に所蔵されている、北陸新幹線や金沢に関する本を御紹介することで、みなさまを加賀百万石の古都に誘います。

『五木寛之の金沢さんぽ』

作家五木寛之は金沢の出身ではありませんが、新人デビューしたのが金沢で暮らしていた時期であり、金沢を第二のふるさとのように思っています。このため、金沢に関するさまざまな文章を新聞や雑誌に発表しており、この本はそれらをまとめたものです。旅行者でも地元民でもない著者の立場だからこそ見えてくる金沢の独特の気配が浮かび上がる一冊です。
例えば、「古い街の新しい朝」という作品の中に、カキツバタの蕾が夜明け前に開くときのポッという音を聞くために、夜明け前の兼六園へ出かける初老の紳士と若い芸妓達の話がでてきます。こうした風雅なエピソードを始めとする知られざる金沢の顔や、金沢三文豪とされる泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星のこと、加賀百万石以前の歴史などにもふれています。
この本を読んで皆さんも五木寛之曰く、「金沢という街の背後にある隠れた艶やかな気配」を一緒に感じてみませんか。

『北陸新幹線沿線 百名山』

『北陸新幹線沿線百名山』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

栗田貞多男/編著 市川董一郎・伊久間幸広/著 信濃毎日新聞社 2015年3月

北陸新幹線の開通に伴い、長野県内から新潟、富山、石川県内の山々にこれまで以上に容易に行くことができるようになり、新たな登山の楽しみが広がりました。
ところで百名山といえば、深田久弥のは『日本百名山』(別ウインドウで開く)を思い浮かべますが、この本は『日本百名山』(別ウインドウで開く)に出てくる北陸新幹線沿線の名山の紹介ではなく、山や植物に造詣が深い長野県内の三人の著者が山行きを重ねて選んだ北陸新幹線沿線にある百の名山が掲載されています。このため、気楽にハイキングできる里山から剱岳や白山などの本格的な登山を要する山まで多種多様な山が紹介されているのです。
この本には体力度・技術度・危険度などの紹介コース、交通アクセスなどが簡単に載っていますので、行きたい山の目星をつけるための本として有効に活用できます。
著者かつ編集者である栗田貞多男は写真家であるがゆえ、ページをめくる度に現れる百名山の百の表情に魅了され、山岳写真集としてただ眺めるだけでも充分にご堪能いただけます。山好きな人もそうでない人も大満足の一冊です。

『歌行燈・高野聖』

さて、最後にご紹介するのは、金沢の三文豪の一人といわれる泉鏡花の本です。
泉鏡花といえば、数々の演劇や映画にその作品が用いられるほど大衆に愛された作家ですが、同時代の作家にも高く評価をされていました。
さきほど御紹介した『五木寛之の金沢さんぽ』(別ウインドウで開く)によると、夏目漱石の『吾輩は猫である』(別ウインドウで開く)や森鴎外の短編小説の中に泉鏡花のことが出てくるようです。金沢の文学といえば泉鏡花は外せません。
数多くある泉鏡花の作品の中でも代表作の二作品『高野聖』と『歌行燈』が読める文庫本を今回御紹介します。
『高野聖』は、高野山の旅僧が旅の道連れになった若者に怪奇な体験談を語る物語です。飛騨の天生峠で道に迷った富山の薬屋を追いかけて、蛇や山蛭が出る山道をぬけてやっとたどり着いた峠の孤屋。そこで、妖艶で匂い立つほど美しく優しい女性からもてなしをうけますが、実は彼女は淫らな心で女性に迫る男どもをこれまでに馬や猿、むささびなどに変えてしまう妖怪だったのです。果たして高僧は…。
豊かな語彙と、耳にするのも心地よい、独特でリズミカルな語り口。泉鏡花の幽玄な世界がいきいきと広がります。
『歌行燈』は勘当された若旦那が叔父と共に謡い、愛しい娘が共に舞うクライマックスが涙を誘う名作です。この本にはこの他三作品が収められています。
静かな北陸新幹線の車内は読書環境に最適です。泉鏡花の文庫本を友に金沢へ旅に出かけませんか。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。