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よむとす No.82 ふるさと飯田の気になる事を探す楽しみを見つけた人々 2014年06月01日

[2017年6月8日]

ID:168

ふるさと飯田の気になる事を探す楽しみを見つけた人々

加藤 みゆき

飯田下伊那は、豊かな自然と薫り高い文化に育まれ、私たちはこれを当たり前のように享受しております。たくさんの「本」と出会い、知らなかったことを知り、それを確かめてみようと現地や現物を求めて、さらなる学びの旅を深めるのはまた楽しい事です。

『地元の名水を知ろう そして、猿庫の泉』

皆さんよくご存じの「猿庫の泉」は、昭和23年8月文部省発行の小学校4年生国語教科書に矢澤邦彦氏(下殿岡出身)著「泉を求めて」が掲載されたことから全国的に有名となりました。それを機に地元の有志の皆さんが昭和26年「名水さるくらの会」を設立し整備に努められたことから高松宮はじめ各界名士から近郷の人々までが、清らかな水を求めてこの地を訪ね、さわやかな水と共に飯田の風情を満喫されています。
飯田の水の美味しさを楽しみ感謝する中で、更に深めたいと探究された方がいます。その方は唐澤秀さん(羽場町)です。「泉を求めて」掲載の国語教科書が、下伊那教育会館収蔵庫にあることを突き止め、その原本に接し、また「手折りこし・・・」の矢澤邦彦歌碑の元原稿を訪ねる旅、その上地元にある他の10名水を調べ、現地を探訪され数々の記録をまとめられました。それをなんと自家製本し『地元の名水を知ろう そして、猿庫の泉』という1冊の本にまとめられ図書館にご寄贈くださいました。
また唐澤さんは、クラーク博士の「少年よ大志を抱け」の言葉の由来も気になり突き詰められました。その成果が『「少年よ大志を抱け」クラーク博士は、ほんとうにこう語ったのか』(別ウインドウで開く)という本です。私が、江宮隆之著『政治的良心に従います―石橋湛山の生涯』(別ウインドウで開く)読んでいましたら、石橋湛山がまさに甲府第一中学校長の大島正健からこの言葉を学び、深く感銘を受けたと描かれておりました。不思議な出会いに感謝です。

郷土雑誌『伊那』

郷土雑誌「伊那」は、昭和27年に復刊されて、少なくなったとはいえ1400余の購読者を持ち、月刊の郷土雑誌が60年余に渡り発行され続けて今に至っていることは、県下唯一です。全国でも稀です。原田島村氏ご一家の筆舌に尽くしがたいご尽力とそれを支えてきた飯田下伊那の文化風土のなせる技かと思います。
飯田下伊那の風土なのでしょうか。とことん調べて明らかにしようとされる方が非常に多く、伊那史学会への持ち込み論文は数多く、地域史探究の貴重な史資料の集積です。
2014.2月(1029)号(別ウインドウで開く)では、青木隆幸氏が、「伊那県と伊那県商社事件」という論文で贋二分金事件解決のために伊那県の取った等価交換という英断の背景が、経済に疎い私にも分かりやすく論じられていています。また伊那県分割、筑摩県併合の要因を考える上で、大きな影響力を持つ事件であることが分かります。
2014.3月(1030)号(別ウインドウで開く)では、佐古新一氏が「上清内路原家の天狗党文書―尊王攘夷の戦を詳細に記述―」という論文を発表されています。清内路原家に残された天狗党文書が昨年秋、山内尚巳先生の講演会で初公開され、佐古氏はアーキビスト資格を生かし解読に着手されたとのことです。その成果である解読概要と、黒羽藩の天狗党文書との比較検討、考察の過程が詳細につづられ、大変興味深いものです。天狗党の悲劇、歴史の分岐点になったかも知れぬ文書を丁寧に解説して下さっています。
郷土雑誌「伊那」は、地域の皆さんの自然、文化、歴史、民俗等各界の熱い思いが詰まった素晴らしい雑誌です。今後も存続していくことを願って、みなさん是非、購読をいたしましょう!バックナンバーも在庫がありますとのことですから、諦めないでお問い合せください。

『シリーズ 遊廓社会2 近世から近代へ』

齊藤俊江さん(元飯田図書館司書)は飯田町遊郭の女性史にも光をあてようとしました。小林郊人(元図書館長)著『廓の五十年』(別ウインドウで開く)(S6刊・二本松貸座敷組合)や村澤武夫著『飯田情話』(別ウインドウで開く)(S58刊、H8復刊 南信州新聞社)など飯田遊郭を書いた本はいくつかありますが、飯田遊郭が栄えた大正時代を明らかにされていない部分がたくさんあります。そこで齊藤さんは、遊郭周辺に住まわれていた方への聞き取り作業や文献資料の読み取り作業を行い、自由廃業制度ができても、衣服費、医療費、仕送り費で借金が膨らむばかりで遊郭から抜け出ることの困難だった娼妓たちの過酷な実態を鮮明にしております。

飯田の図書館には90年余累積された資料が所蔵されています。その資料が読まれて活かされて、この地に住む人々に「図書館があってよかった」と思っていただけることを何より目指しております。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。