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よむとす No.133 「偶然」は突然に。 2016年07月15日

[2017年6月8日]

ID:163

「偶然」は突然に。

中央図書館 中平 憲一

思いもよらなかったことや、するつもりは無かったのに起こる「偶然」。人やモノとの出会い、再会、新たな発想やアクシデントなど、考えてみれば日常は偶然の積み重ねなのかもしれません。今回は「偶然」をテーマにした3冊をご紹介します。

『世の中は偶然に満ちている』

本書は、前衛芸術家であり、尾辻克彦の名で芥川賞作家でもある著者が、「偶然」に起きた日常のできごとと、その日みた「夢」を30年以上にわたり記録した日記です。
小さな我が子に宛てられた手紙を読んであげているとき、「虫」という手紙の文字の上にポトリとテントウムシが止まった「偶然」。出かけた先で奥さんがダイヤモンドを拾うが、気が付けばそこはダイヤモンドホテルだった「偶然」。焼いてもらった赤楽茶器の出来栄えが気に入らず、雨漏りの水受けにでも使うしかないといっていたら台風が急接近して窓枠からの雨漏りの水受けになってしまった「偶然」など。著者自身が「狩猟採集民」と例えるように、ふだん見逃してしまいそうな日常を、カメラ片手に観察し記録とした日記からは、芸術家らしく日々の出来事を別の世界として見ているように感じられ新鮮に映ります。眠っている間にみる「夢」の記録と一緒に読むと楽しい一冊です。

『間違いを活かす発想法』

『間違いを活かす発想法』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

シャーロット・F・ジョーンズ/文 ジョン・オブライエン/絵 左京久代/訳 晶文社 1997年2月

作家マーク・トウェインは「すべての発明家のなかで、最も偉大な発明家は…偶然、である。」と言ったとか。本書を読むと、私たちの身のまわりにある多くのものが、実は意図していなかった研究・実験・出来事から生まれたものだと知ります。
とあるレストランでフライドポテトを「もっと薄く、じっくり揚げろ」という客からの執拗なクレームに、半ば嫌がらせのつもりで出したところ大評判になったポテトチップス。チャールズ・グッドイヤーは科学的研究のさなか、不注意に混合物1滴をストーブの上にこぼした結果、しなやかで丈夫なゴムを作り上げた。超強力な接着剤を作ろうとしたら、すぐに剥がれる超弱力な接着剤ができあがり付箋として使われる「ポストイット」が製品化された、などなど。
このほかにも、ブタの貯金箱、レオタード、コカ・コーラやドーナツの穴など、さまざまな発見・製品化にまつわる楽しい40のエピソードです。書名にもあるとおり、「偶然」を「偶然」で終わらせない発想の転換が見どころです。

『「日常の偶然」の確率』

『「日常の偶然」の確率』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

ティム・グリン=ジョーンズ/著 藤原多伽夫/訳 原書房 2013年2月

若気の至りで、「頼んで産んでもらったわけじゃない」なんてひどい言葉を言ってしまったりはしていないでしょうか。本書によれば、この世に生まれる確率は746兆分の1。これにあなたの両親がヒトとして生まれ、出会い、両親として存在する確率も踏まえれば、自分が存在する確率は限りなく0に近いものとなります。両親にしても、産もうとして産める確率ではなく、運命というか奇跡だったのだと知ります。
ドイツの水族館に存在したという、ワールドカップ8試合の結果を言い当てる超能力タコ「パウル」の256分の1の確率の秘密や、サメ・牛・カバ・ニカラグアの蛇などに殺される確率、なんてものまで書かれています。起こるとも、起こらないともわからない出来事としてお楽しみください。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。