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よむとす No.60 今、社史がおもしろい! 2013年07月01日

[2017年6月8日]

ID:158

今、社史がおもしろい!

中央図書館 加藤 みゆき

地元社史は地元の素晴らしさ、先人の偉大さを教えてくれる宝の山です!
過去を振り返ることで、未来が見えたり、拓けたりするものです。難解で昼寝の枕しかならないと思われがちな社史ですが、ひもといてみると見えないものが見えてくる面白さがあります。

『より遠くを見つめて―野原達也の足跡―』綿半野原グループ事務局 編

「綿半」の始まりは、「慶長3年、中谷勘右衛門改め仁兵衛、飯田に綿の栽培を導入して商いをはじめ、綿屋を屋号とする。」(年表より)江戸から400年と長い期間、のれんを守って商勢を盛り上げてきた企業力の素晴らしさに感心いたします。こういうところは世襲で、ご子息はすぐにも社長になるのかと思いましたら、なんと野原達也さんは高校を出てすぐ大阪に修行に出て、艱難辛苦の中で経営学を身に着けられたとのこと。のれんを守る企業の姿勢の素晴らしさに感動しました。しかもその修行時代の過酷な労働に体まで壊され、失念の思いの3年間の療養中に、釈迢空(折口信夫)の随筆と出会ったことが、彼の人生を大きく支えたと書かれています。人生は「最善の努力を尽くして、天命を待つ」という言葉がすとんと胸に落ち、心の転機となり、回復も進んだとあり、生きる力をもらい、その後の経営者としての人生に大きく影響したことがわかります。飯田大火直後32歳で社長となり後継できる人材体制を築き49歳で社長を退かれたことも驚きです。がそれを受け継いだ企業集団の力の強さや絆の素晴らしさに感銘を受けます。また、地元の高校進学者のために「竜峡育英会」を創設される等社会貢献に尽力された方です。
人は窮地に立った時、「もうだめだ」とあきらめない強さを、先人の言葉から学び、血と肉とし活躍した野原達也さん。わたくしたちはこの社史から多くのものを受け取ることができます。

『飯田支店のあゆみ 中部電力株式会社飯田支店』記念誌作成委員会 編

職員のアイデアと開発が日本中に!
伊那谷の谷や河川が多いこの地形での配電線工事の如何に大変かは、お察しするに余りあります。延長用ロープを張るために、「従来は火薬によるロープ投射器やラジコンヘリコプターなど用いていた。」(本書112pより)そうで多大な労力が必要となり、効率が悪く安全面でも課題があったところ、なんと当時流行したリサイクル玩具「ペットボトルロケット」を改良開発し、平成12年に新工技法が完成!谷や河川や果樹園上空での作業が格段と効率化され日本全国から注目を浴び、世界にまで紹介されました。

地域課題があるからこそ生まれた知恵や新技術、それを育んだ風土があったからでしょうが、それを成し遂げた企業内の絆と努力に頭が下がります。

飯田下伊那の事業者の皆さん、ぜひ社史を編纂し、社員のため、地域のために残しましょう!
図書館では社史作成講座を10月31日(木曜日)18:30~社史研究家村橋勝子さんを講師に開催いたします!

『伊那谷 電気の夜明け―電灯がともって80年を記念して』

『伊那谷 電気の夜明け―電灯がともって80年を記念して』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

中部電力株式会社飯田支社広報課 中部電力株式会社飯田支店発行 昭和56年刊

伊那谷にはじめて電気がついた明治32年から80年を記念して出版されたこの本は、伊那谷の各地で起業された電気会社や電気組合等の事業の様子が、網羅的に記録された貴重な本です。
「飯田電灯会社は、町の有志により計画され明治32年1月23日創立した。(中略)初代社長は正木屋小林源一郎が就任し、12月末に待ちに待った電灯があかあかと灯った」(本書10pより)と飯田町のはじめての電灯に町民の驚きなど古老の言葉で語られ、天竜川水系での電気事業の先駆けで、松川第1発電所75キロワットから始まり、大正4年には250キロワットまで増強されたが、伊那電車軌道会社に大正7年吸収合併されるまで飯田町・鼎村・松尾村に光をもたらしたとのこと。
さらに、竜丘や三穂や上郷など、わが国初の電気供給事業組合の設立など独自な運営がされ、地域に光と財をもたらしたことがわかります。
現在の飯田市でもまた、伊那谷の自然の恵みを生かした小水力発電事業・太陽光発電事業が推進されています。地元の先人の努力をまず知ってみましょう!

飯田図書館では、図書館まつり特別資料展11月23日(土曜日)~12月1日(日曜日)でこの「伊那谷の電気事業」を取り上げます。ぜひ、その際はお出かけください。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。