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よむとす No.119 烏兎怱怱 ~あっという間の一年を振り返るこの時期に~ 2015年12月15日

[2017年6月8日]

ID:142

烏兎怱怱 ~あっという間の一年を振り返るこの時期に~

中央図書館 中平 憲一

今年も気がつけば師走となりました。年末年始に向けて徐々に忙しさが増すなかで、今年一年を振り返る機会も多くなってくるのではないでしょうか。良くも悪くも、新しい年に向けてのステップにしたいものです。
そこで、今回は「失敗」や「経験」をどのように捉えたらよいのか、そのもの「ズバリ」の答えではないけれど、ちょっとだけ考えるヒントになる本のご紹介です。

『英雄の書』

人工知能学者である著者が、脳科学を用いて「失敗」や「孤独」、「自尊心」、「使命感」等について若者に向けて書いた本。人生を切り拓くためにも「失敗」は通過点に過ぎず、「孤独」がいかに必要であるかを、脳のしくみを用いて分かりやすく解説します。「失敗」や「孤独」が怖くなくなる一冊。

『八甲田山死の彷徨』

ロシア戦争に備え、日本陸軍が八甲田山で行った雪中行軍で起きた、史上最悪とも言われる山岳遭難事故を題材にした山岳小説です。2つの連隊が同時期に雪中行軍を計画しますが、一つの連隊は無事に成功を収め、もう一連隊では210人中199人が遭難し死亡してしまいます。
ちょっとした失敗ならいいけれど、致命的な失敗は誰しも避けたいはず。例年にない寒さを記録したといわれる過酷な自然条件下で、2つの連隊にどのような違いがあって成功と失敗に繋がったのか。
リーダーシップの視点で読まれることも多い一冊ですが、さまざまな立場で、この過酷な計画を想像体験してみてはいかがですか。

『いってもいいかい 務台貴夫詩集』

教員であった著者が、教員として、詩人として、また家庭人としての日常を綴った57篇からなる第1詩集です。多くの人への感謝の気持ちから出来上がった詩集とありますが、作品からは「務台先生」の愛情の深さが感じられます。
教え子や若者に向けたであろう「強く、まっすぐに生きる」ことへのメッセージはもちろんですが、家庭での出来事を思い出させる作品など、身近な出来事だからこそ共感して生活を振り返ることができるのかもしれません。

『自分の感受性くらい』

戦中から戦後にかけて活躍した女性詩人・茨城のり子の詩集です。この詩は戦争で多くのものを失った時に感じたことをうたったものとも言われています。戦後の厳しい生活の中でも、自分自身でしっかり考え、自分の感受性でもって判断することの大切さを強くキッパリと言い切っています。そして締めくくりには「ばかものよ」の一喝。作られた背景を知らずとも、いまの時代に当てはめて読み、感じることができるのではないでしょうか。

どうぞ、皆さんにとって来年がより良い年でありますように。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。