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よむとす No.120 小説を読んで美術鑑賞 2016年01月01日

[2017年6月8日]

ID:137

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小説を読んで美術鑑賞

中央図書館 関口 真紀

新しい年が始まりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさんは美術鑑賞をされるでしょうか。美しい名画は人の心を動かし、心豊かな気持ちにさせてくれます。名画は画家が込めた思いや時代背景、画家の人生などを語っており、そこから物語が生まれ、ときに小説となります。今回は画家(絵師)の心境に迫るような小説をご紹介したいと思います。

『若冲』

伊藤若冲は江戸時代に京都で活躍した人気絵師です。目を見張るほど繊細な描写技法とユーモラスな表現方法で、近年多くの人に愛されるようになってきました。この本は、伊藤若冲の生涯を追った小説で、若冲ファンの期待を裏切らず、ファンをさらにとりこにするほど若冲の心境がよく描かれています。直木賞の候補作にも選ばれました。
小説なので著者の創作はもちろんあります。若冲は生涯独身でしたが、小説の中では妻がいたことになっており、妻とその弟の存在があらすじのキーポイントになってきます。実際にあった事件やエピソードが盛り込まれ、実在の人物、池大雅、与謝蕪村、丸山応挙といった人々も登場して物語を面白くしています。若冲はなぜこんなにも繊細な絵を描いたのか、その絵に込められた思いとは。天才絵師伊藤若冲の実像に迫る小説です。
ちなみに今年は伊藤若冲生誕300年という記念の年になり、東京では大きな企画展示が予定されています。代表作「動植綵絵」30幅と「釈迦三尊像」3幅が一堂に会すそうで、若冲ファンにはたまらない年となりそうです。

『等伯』上・下

東京国立博物館で、毎年お正月に長谷川等伯の「松林図屏風」が展示されます。安土桃山時代の絵師・長谷川等伯の代表作であり、この本のカバーのデザインにもつかわれている「松林図屏風」はどこか寂しさを感じさせます。どうして寂しさを感じるのか、「松林図屏風」に込められた長谷川等伯の思いとは、この小説を読むことで納得できます。この本は長谷川等伯の生涯を描いているのですが、なぜ「松林図屏風」を描いたかということが最大のテーマになっているように思われます。絵師としての野望や葛藤、ライバル狩野永徳との対決、最愛の息子の死という大きな悲しみ、「松林図屏風」を描くまでにいたった等伯の心中がたいへんよく表現されており、この本を読んで長谷川等伯のファンになった人は私だけではないはずです。ちなみに作者の安部龍太郎はこの作品で直木賞を受賞しています。

名画に込められた絵師の物語を読むと、より一層名画を深く鑑賞でき、その絵師のことをもっとよく知りたくなるものです。そんなときには東京美術から出版されている『もっと知りたい伊藤若冲』(別ウインドウで開く)『もっと知りたい長谷川等伯』(別ウインドウで開く)が手に取りやすくておすすめです。
みなさんにとって素敵な一年となりますように。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。