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よむとす No.142 おんな城主井伊直虎にせまる 2016年12月01日

[2017年6月8日]

ID:98

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おんな城主井伊直虎にせまる

鼎図書館 宮下 裕司

2016年のNHK大河ドラマは、信州の武将真田信繁を描いた「真田丸」で盛り上がりました。2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」は、同じ戦国時代の遠州を舞台とした作品ですが、伊那谷にもゆかりのある物語となるようです。そこで直虎と井伊氏にまつわる本をご紹介します。

『井伊直虎 女(おなご)にこそあれ次郎法師』

戦国時代、遠江の井伊谷(現在の静岡県浜松市北区)を治めていた領主井伊直盛には後継ぎとなる男子がおらず、子は一人娘の祐だけでした。将来は直盛の叔父にあたる井伊直満の子亀之丞を婿に迎えようと幼いうちから、二人は許嫁として育てられていました。
井伊家はこの地を治めて500年にもなる由緒ある家柄でしたが、当時は隣国駿河の大名今川義元の配下であり、その顔色を常にうかがわなければならない立場でありました。そんな折、謀反を疑われた直満と弟の直義が今川の手により殺されてしまいます。このままでは亀之丞の命も危ないと感じた井伊家では、幼い亀之丞を信州市田郷の松源寺で匿ってもらうことに。こうして、亀之丞と離れ離れとなってしまった祐は出家し、次郎法師と名のるのでした…。
当時の遠州は、駿河の今川、甲斐の武田、尾張の織田、三河の徳川と有力な大名たちに囲まれており、その後の次郎法師と井伊家も桶狭間の戦いや武田と徳川の争いに否応なしに巻き込まれていきます。著者の梓澤さんも静岡出身で、戦国時代に女性の身でありながら領主をつとめた井伊直虎にいち早く注目して小説にされていました。この作品も新人物往来社から2006年に『女(おなご)にこそあれ次郎法師』(別ウインドウで開く)のタイトルで出版されていたものが、今回の大河ドラマ化を受けて改題された新装版です。

『歴史の風 中世地方国人の動静 信州松岡氏と遠州井伊氏』

亀之丞、後の井伊直親が今川の手から逃れるためにやってきたのが、信州市田郷(現在の高森町)の松源寺です。井伊家がこの地を選んだのには、理由がありました。それは井伊家の菩提寺である龍潭寺とのつながりです。松源寺を開いた文叔瑞郁(ぶんしゅくずいいく)は、市田郷主松岡氏の出身で、のちに妙心寺の住持もつとめた名僧でした。この文叔瑞郁が遠州を訪れた際に、当時の井伊家領主直平が深く帰依し、それがきっかけとなって井伊谷に龍潭寺が開かれます。亀之丞を市田の松源寺へ逃がすことにしたのは、井伊家出身の龍潭寺住職であった南渓でした。こうして、亀之丞は市田の松源寺で松岡氏の庇護を受けながら十年余りを過ごすことになるのです。
この本では、こうした松岡氏と井伊氏の関係について、史料や史跡にあたりながら、紹介されています。この他にも、南北朝時代の宗良親王と井伊氏との関わりや、織田や武田の侵攻に翻弄される伊那谷の国人たちの様子なども知ることができ、伊那谷と遠州との古くからの交流に思いを馳せる一冊です。

『おんなの城』

戦国時代に活躍した女性は直虎だけではありませんでした。こちらは直木賞作家安部龍太郎さんの新刊で、戦国時代に各々のやり方で城を守ろうとした三人の女性の物語です。まずは、おんな城主で知られる美濃の岩村城(現在の岐阜県恵那市)の珠子。続いては能登の七尾城(現在の石川県七尾市)の城主畠山義綱の側室佐代。最後に井伊谷城主をつとめた井伊直虎。
戦国の世にあって、女性たちは政略のために嫁がされたり、離縁されたりと道具のように扱われていましたが、その中にあってそれぞれが大切にするものを守ろうと懸命に戦う姿に胸を打たれます。
直虎の話は、梓澤さんの作品とはまた違った視点で描かれており、同じ人物を別の作品で読み比べてみるのも歴史小説の楽しみです。いずれの話も場面を絞って描かれた中編小説で、読みやすいのもおすすめの点です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。