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よむとす No.146 家族のカタチ 2017年02月01日

[2017年6月8日]

ID:61

家族のカタチ

中央図書館 田中 瑞絵

みなさんの家族はどんな家族ですか?人が一人一人違うように、家族のカタチもさまざまで、いろんなカタチがあるのだと思います。今回は、そんな家族のカタチをテーマに本をご紹介したいと思います。

『幸福な食卓』

「父さんは今日で父さんをやめようと思う。」こんな意味不明で衝撃的な言葉で物語は始まります。主人公・佐和子の家族の決まりは、毎朝、家族全員がそろって食卓に着く事。そして、重大な決心や悩みはその席で告白されるという事。母が家を出る事を決めたのを知ったのも、この食卓でした。家族の食卓から、母が消え、父が消え…。そして、それをすんなりと受け入れる兄。家族のカタチは、もう形を成さず崩壊寸前に見えます。
父の自殺未遂、母の別居、地域で評判の天才児だった兄は進学せず、農業をしながら気ままに日々を送っている。こんな重苦しい状況なのに、家族の日常はほのぼのとした雰囲気で綴られていきます。家族のカタチが変わっても、お互いを想い支えるやさしさが変わらずあるからでしょうか。物語の終盤、佐和子に大きな悲劇が起こります。苦しみの中にある佐和子に、兄の恋人はこう言います。「家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。」と。
第26回吉川英治文学新人賞受賞。映画化もされています。

『カール・ラーション スウェーデンの暮しと愛の情景』

カール・ラーションは19世紀後半から20世紀にかけて活躍したスウェーデンの画家です。壁画のような大作から挿絵まで幅広いジャンルの作品を手がけましたが、自らの家族と日々の暮らしを描いて人気を博し、『スウェーデンの国民画家』と言われているそうです。自身の著書の中で「日本は芸術家としての私の故郷である。この地球上で本物の芸術家といえるのは、ただ日本人だけである。」と記すほど、日本美術から強い影響を受けていたようです。作品の中にも、日本人形のような玩具や、ちょんまげ姿の人物が描かれていたりしています。
この本では、そんなカール・ラーションの描く、愛にあふれた美しい家族のカタチを見ることができます。愛らしい子供たちの姿や、妻と二人で改築、装飾を重ねたオシャレな家は「リッラ・ヒュットネース(岬の小さな精錬小屋)」という愛称で呼ばれ、現在も記念館として公開されています。あたたかく美しい色彩で描かれる家族の日常は、私達に幸福感を与えてくれます。

『キタキツネの十二か月 わたしのキツネ学・半世紀の足跡』

獣医師であり、エッセイスト、写真家である著者が50年にわたって続けてきたキタキツネの観察の記録です。キタキツネの恋、出産、子育て、子別れなど、12か月を追います。キツネは家庭の中に夫・父親を存在させる珍しい哺乳類なのだそうです。(日本では、タヌキ、人間だけ)その家族のカタチは、まるで人間社会を見るようです。キツネの雄は巣穴を持ちません。巣穴は雌のもので、雄は入り婿的な形で生活します。子育てが一段落すると、どこか別の所へ行ってしまうため、『一家の大黒柱』といった感じは全くありませんが、家族の為に狩りをしたり、巣穴を守ったり、育児にも積極的に参加します。雄一匹、雌一匹と子ども達というのが、キツネ家族の一般的なカタチのようですが、中には雄が二匹いたり、里帰りして子どもを産み、母や姉妹達と一緒に子育てをするキツネもいたりします。さらには、血縁関係がないにもかかわらず、赤の他人(他キツネ?)がやってきて育児の手伝いをするなどという家庭もあったりして、人間の世界にさまざまな家族のカタチがあるように、キツネの世界にもさまざまな家族のカタチがあるようです。
50年に及ぶ観察の記録ですので、少々厚めの本となっていますが、子供でも読めるように書かれてあり、写真も豊富に載っていますので、親子でも楽しめる一冊です。同じ著者の本で『キタキツネのおとうさん』(別ウインドウで開く)『キタキツネのおかあさん』(別ウインドウで開く)もあります。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。