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よむとす No.126 耳を澄ませて… 2016年04月01日

[2017年6月8日]

ID:60

耳を澄ませて…

中央図書館  三矢 文美子

通勤の車でふと聞いた音楽に、元気をもらったり慰められたり…。音楽には、不思議な力がありますね。みなさんは、どんな音楽が好きですか?
今回は、音楽にまつわる本をご紹介します。お気に入りの曲をかけながら読んでみてはいかがですか?              

『羊と鋼の森』

主人公の青年・外村が、ピアノ調律師として成長していく姿を、静かに温かく描いた物語です。物語は、高校の体育館のピアノの調律を偶然耳にした外村が、そのピアノの音に豊かな森を感じるところから始まります。彼は、調律に魅せられ、調律師を志すようになります。
新人調律師としての日々は、未熟さとの闘いの日々でもあり、苦しみもがきながらも、先輩たちの指導を受け、見守られながら、一歩一歩成長していきます。
「森に近道はない。自分の技術を磨きながら一歩ずつ進んでいくしかない。」(本文より)
その、淡々と研さんを積む姿に、勇気づけられる人も多いのではないでしょうか。
ピアノというと、演奏者や楽曲ばかりに目がいきがちですが、音色や表現を陰で支えているのは調律師であり、良いピアノ演奏には必ず信頼関係に結ばれた良い調律師の存在があると気づかせてくれる一冊です。ぜひ、どうぞ。

『チェロの木』

森の木を育てていた祖父について森の中を歩いた幼い日々の記憶、季節の移ろいの中で感じる美しい自然の変化が全編にわたって見事に描かれ、温かいチェロの音が聴こえてきそうな美しい絵本です。
ある日、少年は楽器職人の父のつくったチェロを通じてあるチェリストに出会います。そして、教会でバッハの無伴奏のチェロ曲を聴き、少年はチェロに魅せられていきます。少年の気持ちに気づいた父は、仕事の後の夜の時間に小さいチェロをつくりあげ、息子へのプレゼントにします…。
さて、少年もやがて大人になりましたが、この小さなチェロはどうなったでしょうか?
少年はずっとチェロを弾き続け、やがて子供たちにチェロを教える道をえらびました。父のつくってくれた紅茶色の小さなチェロは、年老いても大切な宝物であり、彼の生徒たちに、うけつがれていきます。
森の木を育てた祖父の思い、その木で楽器をつくった父の思い、それを演奏するチェリストの思い、子どもにチェロを教える彼の思い。すべてが、つながっていきます…。
児童書の棚にある絵本ですが、大人にもおすすめです。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。