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よむとす No.152 修復に携わる仕事 2017年05月01日

[2018年3月6日]

ID:25

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修復に携わる仕事

中央図書館 遠山 百合香

日本には沢山の優れた職人がいます。その中には修復の専門家がいます。傷んだ部分を直し、いかに元の状態に近づけるか。そして未来に残していけるような状態にするという大変な努力の積み重ねによってできる素晴らしい仕事です。
今回は、絵画・城・本や写真の修復にかかわる3冊を紹介したいと思います。

『モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事』

岩井希久子さんは、ゴッホの「ひまわり」やモネの「睡蓮」などの世界的な名画の修復を手掛けた絵画修復家です。修復していく現場の様子や修復家だからこそわかること、中には誤った修復によってダメージを受けた絵もありオリジナルが失われている現実、日本の美術館の問題なども書かれています。
岩井さんは、「世界でいちばん絵にやさしい修復」を理念に、世界で通用する技術で仕事をし、作家の魂を未来に残すため作家の思いにできる限り寄り添い、作品にとって最善の状態を保つ修復に取り組んでいます。そして、修復も大切だがいかに保存していくかが重要だと考え、絵を劣化させずに保存する「低酸素密閉」という独自の保存方法を開発しました。
修復コラムには修復方法や修復道具など、写真付きでわかりやすく掲載されています。
この本は単に絵画修復の技法書ではなく、仕事を持つ女性の大変さ、母として家のこと子供のことを思いながらも、確固たる信念を持って真摯に仕事に取り組む岩井さんの姿を知ることが出来ます。

『世界遺産姫路城を鉄骨でつつむ。よみがえる白鷺城のすべて』

姫路城が鉄の屋根ですっぽりつつまれたことをご存知でしょうか。「昭和の大修理」から45年、「平成の保存修理」が終わり、新たな姫路城が現れました。この本はその過程が迫力ある写真や工事中にしか見られない貴重な写真の数々で見ることができます。
13階建てのビルにも相当する高さの大天守が大きな素屋根につつまれましたが、この工事を進めるにも、姫路城は国宝で世界遺産でもあります。大天守に傷一つ付けられず、屋根や壁に鉄骨が触れることは万が一にも許されません。とてつもないプレッシャーの中、鉄骨を組み立てていく。その緊張感が伝わってきます。制約が多くさまざまな困難があった中、無事に修理が済んだのも、腕の確かな職人たちに支えられてきたからです。そんな職人たちの紹介もされています。鉄骨で包まれた中では、屋根瓦の保存・修復や鯱瓦の製作や漆喰の全面的な塗り替えられる作業の様子も書かれており、姫路城の迫力に迫った1冊です。

『思い出をレスキューせよ! “記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士』

岩手県大船渡市の金野聡子さんを紹介した本です。金野さんは「紙本・書籍保存修復士」であり「製本家」でもあります。2011年の東日本大震災で津波の影響を受けた方の写真や古書を救うため被災した写真などの洗浄・保存に取り組む姿が書かれています。
“思い出の品とは、そこに生きてきた人たちの、歴史そのもの。それぞれの記憶が未来へつながらなければ、ほんとうの復興はあり得ない”と訴え、被災した写真を救うための作業が始まりました。金野さんの強い意志と迷いなき行動は素晴らしいと思います。
重油・海水・砂やヘドロなどひどい状態の写真が次々と金野さんのもとに運び込まれてきました。大変な情況の中でも、金野さんの専門的な知識とネットワークにより国内外から専門家の支援を受けることができ、また、ボランティアの支えにより多くの思い出が救われていきます。
児童書ですが大人の方も手に取って見ていただきたいと思います。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。