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よむとす No.100 図書館で、新たな出会いと感動を! 2015年03月01日

[2017年6月8日]

ID:23

図書館で、新たな出会いと感動を!

中央図書館 加藤みゆき

前牧内和人館長の発案で始まった「よむとす―こんな本いかが」の紹介本連載も今回で100回目を迎えます!インターネットがこんなに普及し、調べ物もネットで、本を買うのもネットでという昨今です。しかし図書館では、図書館でしか出会えない本、事典、雑誌などと、感動的な出会いや心にしみいる出会いに遭遇できます。古今東西、先人が辛苦の末に到達した多分野の確かな資料(事典、辞典、図鑑)とも出会えます。
「自殺したくなったら図書館へ!」と竹内悊(さとる)氏(元日本図書館協会理事長)の言葉ですが、壁にぶつかった時、辛くなったら、図書館に来て本と出合いましょう。先人の知恵と勇気と感動を貰えることでしょう。私も、『ハイジ』(別ウインドウで開く)(シュピーリ著)や『一路』(別ウインドウで開く)(浅田次郎著)『神様のカルテ』(別ウインドウで開く)(夏川草介著)などたくさんの本に心を洗われ、潤され、元気をもらいました。今回、わが郷土に縁の本をご紹介します。

『飯田の昭和を彩った人びと』

「白樺」にあやかって大正11年飯田において、芸術至上主義的短歌雑誌「夕樺」の創刊に関わった岡村二一氏は東京に出て、同じく竜丘出身の熊谷寛氏に勧められ、終戦直後に新聞「東京タイムズ」を創刊し、熊谷寛氏も大衆雑誌「ロマンス」創刊し、戦後の出版界を席巻しました。日本随一の郷土誌を育てた原田島村氏夫妻、飯田下伊那地方の郷土出版に生涯を捧げた山村正夫氏など郷土人の出版界での活躍を綴っています。
また一千万円以上の負債を抱え自殺も考えた木下長志氏が、上京し艱難辛苦の末、木下工務店を成功に導いたその波乱万丈な生涯も取り上げております。ふるさと飯田を誇りに思い活躍した飯田出身の人々の活躍をご覧ください。

『井上井月伝説』

『井上井月伝説』詳細情報のページはこちら(別ウインドウで開く)

江宮 隆之/著 河出書房新社 2001.8刊 N913イノ、Fエミ

松岡正剛氏の『千夜千冊』(別ウインドウで開く)でも紹介されているこの本は、芥川龍之介の勧めでその主治医である下島勲(伊那出身)氏が『井月全集』(別ウインドウで開く)を編みだしたところから語られ、人間井月が浮き彫りにされていきます。芭蕉を神様とも崇め、芭蕉に自分を重ね同様に放浪を住処とした井月。芭蕉の句集を諳んじ、書にしたため、伊那谷で生涯を終えた井月の生き方が心に沁みる一冊です。
「何云わん 言の葉もなき 寒さかな」としたためそっと差し出す井月の優しさに心温まります。

『告発―犯人は別にいる―』『エン罪の内幕-丸正事件ほか』『誓いて我に告げよ』

『告発―犯人は別にいる―』『エン罪の内幕-丸正事件ほか』『誓いて我に告げよ』の画像

かつて飯田高等学校の教壇に立った、正木ひろし氏(弁護士)の正義感に燃える真摯な活動は、正木氏の著書に記されていますが、小説家佐木隆三氏が小説に仕立てて、李學仁監督が映画化し全国的に話題となりました。静岡県三島市で起こった丸正運送店主殺人事件では、在日朝鮮人のトラック運転手と助手が犯人とされます。一貫して無罪を主張していた運転手と、拷問によって偽りの自白をしてしまった助手、二人の心理描写を中心に描かれています。社会のひずみを告発し、敢然と立ち向かった正木ひろし氏、鈴木忠五氏両弁護士に深く心を打たれます。
法政大の高柳俊男氏により出会わせていただけたことに感謝です。飯田下伊那には正木ひろし氏の教え子もいらっしゃいます。風化させたくないことです。

素晴らしい自費出版の数々

飯田町には記憶力に優れ、幅広い知識と豊かな見識を持った文化人の方々が多く、自費出版でたくさん本を出されており、短歌や句集、詩集、随筆、自伝等たくさんある中で、今回は飯田の歴史や生活が手に取るようにわかる本をご紹介いたします!

『高田久四郎遺作集』

飯田の老舗「嶋久」商店14代当主高田久四郎の文章を松下義人さんが編集し出版した本です。
飯田の旧町屋は各家の裏庭には梨の木が植えてあり、花の季節には白山町あたりから眺めると、白い花と街並みが美しく調和してそれは素晴らしかったとのこと。かつての飯田町の暮らしが伺える本です。

『御用伺い七十年』

伝馬町松岡醸造13代目(本町松屋引き継ぎ)当主で大火の災厄を乗越え奮闘された小塩禄郎さんは、その傍ら戦時中疎開していた岸田國士、日夏耿之介、森田草平などと交わり地元の名士や郷土史家を取りまとめ「話の会」(元静話会)を長年主催し続けた文化人です。小塩氏の語りを信毎論説委員の小原謙一氏が文章に起こしたこの本は、「記録魔」とも呼称された小塩氏の飯田町に関する正確な記録が凝縮されている一冊です。伝統の飯田煙火、お練りの事、大正年間の子どもの遊びや歌、旧制飯田中学の福澤悦三郎先生の「伊那電車の歌」、疎開していた名士ことなど興味尽きないお話が満載です。

『飯田市建設の祖 京極高知公伝』

明治35年飯田市伝馬町に生まれ、母方山本家を継ぎ、瑠璃寺の慈達僧正に得度を受けた慈昭氏は、先頃の映画「望郷の鐘」により広く知られております。中国残留孤児救済運動に生涯をかけた方ですが、一方郷土史にも造詣が深く、ことに阿智史学会の中心となって「郷土史巡礼」等企画創刊し、長年主筆として活躍されたかたです。この本は京極家関係はじめその前後の毛利氏や堀氏にも触れ、京極家の歴史と共に飯田町が城下町として町並みが整備されていく過程が京極年表で併記され、初心者でも分かりやすい好著です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。