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よむとす No.292 春になるので……

[2023年3月15日]

ID:978

春になるので……

鼎図書館 木下 和子

「黄色い花から春が来る」と言われますが、蝋梅や水仙、福寿草の黄色い花からそろそろ桜、チューリップへと花の色も移っていきます。そして、桜の開花がニュースで言われるようになると、「あの本の時期だな」と開きたくなる本たちがあります。春になるので、「あの本」を開いてみませんか。

『あさになったのでまどをあけますよ』

「あさになったので まどをあけますよ」
「やまは やっぱり そこにいて
きは やっぱり ここにいる
だから ぼくは ここがすき」
この絵本と出会ったとき、それまですっかり忘れていた中学校の卒業式でのお話を思い出しました。「人の一生を1日に例えると、自分の年齢を3で割った数が1日の時刻になる。今15歳の皆さんは1日でいうと、朝の5時。これから本格的に1日の活動が始まるので頑張ってください。」この卒業式のお話と絵本がリンクして、朝だった中学生のときから1日は過ぎていき、今は午後の時間になっている私はちゃんとできているのかなと、自分のことを問われている気持ちになりました。
それから3月が来るたびに、『あさになったのでまどをあけますよ』を開きます。最近は、「人生100年時代って言われているから、3じゃなくて4で割ってもいいかな」と自分の1日の時刻を甘く考えながら、また頑張ろうと背筋を伸ばしています。

『ケイゾウさんは四月がきらいです。』

『ケイゾウさんは四月がきらいです。』(別ウインドウで開く)
市川 宣子/さく さとう あや/え 福音館書店 2006年4月

「ケイゾウさん」は幼稚園で飼われているにわとり。新しいお友だちが入園してきて、小屋から出してもらえないので、4月はきらいです。そんなケイゾウさんの小屋に、今年はみみこといううさぎがやってきました。「ケイゾウさんは○○がきらいです。」の題で、ケイゾウさんとみみこと幼稚園のみんなの1年間を綴った物語は、その題名とは裏腹に、ケイゾウさんのみんなへの愛情が詰まったお話で、人が成長する、大きくなるってこういうことだなと教えてくれる本です。
図書館で働いていると、1年間を通して読み聞かせをしている保育園の子どもたちと仲良くなります。5月のころはなかなか絵本に集中できなかった子どもたちも、2・3月になるとしっかりお話が聞けて、「短い、もっと読んで」と言ってくれるようになります。3月は年長の皆さんとのお別れの時期。子どもたちの成長はうれしいけれど、頻繁に会えなくなる寂しさもあって、私もケイゾウさんと一緒で「三月がきらいです。」になりそうです。

『春や春』

『春や春』(別ウインドウで開く)
森谷 明子/著 光文社 2015年5月

春というと、いくつになっても「青春」を思い出すということで、このお話です。
高校生たちが俳句と出会い、仲間と出会い、俳句甲子園に臨むこのお話は、まさに「青春」。俳句という17文字の世界に魅了された高校生たちは、限られた字数で表現するからこそ、言葉とひたむきに向き合って、よりぴったりな言葉を厳選していきます。俳句甲子園ではお互いの俳句の批評も含めて勝敗が決まるのですが、大事なことは勝ち負けではなく、たった17音で心を揺さぶり他人の共感を呼ぶ俳句を鑑賞することだと気づきます。ちなみに、8月に愛媛県松山市で行われる俳句甲子園全国大会。手に汗を握りながら俳句甲子園の勝敗を読み進めるのは、蝉の声が聞こえる夏のほうが臨場感を楽しめるのかもしれませんね。
春は出会いの季節でもあります。高校生たちが俳句に出会って魅了されたように、言葉には人を惹きつける力があります。そんなステキな言葉たちと出会える本を、ワクワクする春になるので開いてみませんか。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。